東京日本橋にある絵画教室「アトリエ ラポルト」の佐藤先生より筆を頂きました。
見た瞬間ピンと来る方がどれほどいるかは存じませんが、私などは早速テーブルにぐいっと押し付けて筆先の広がり具合を確認。
上から垂直におろしていき、抵抗なくバサっと広がるか否かがフロッタージュに向く良い筆の見分け方です。
フロッタージュとはフランス語でこすりつける技法の事ですが、筆を押し付けるように描く際もこの形状の筆が活躍します。
マネの古典筆を筆頭に(?)、以前ブログで紹介したマイメリやレオナルド、イザベイの筆が該当し、東京の世界堂や文房堂に行ける方でしたら手に入れることができますが、なかなかそこいらの画材店ではお目にかかれません。
マネの筆は数年前に「アダムスジャパン」の通販で購入可能でしたが、たしか最低発注数が1サイズにつき3本以上の制約がありました。
今回の筆は上記のものとは異なりますので、どこぞの新製品か、はたまた安い筆を見つけられたのかと思いきや、なんと一から設計したオリジナル筆との事。
飯田先生やラポルトの佐藤先生の話を伺うと、国産の豚毛の丸筆はどうしても毛先が揃い尖ったものになってしまっているがこれは書道や日本画で使う筆の形状を模したもので、古くから西洋の油彩画で使われた“ブラシ”形状の筆とは用途が異なるとのご意見。
たしかに筆が描かれた古い絵には先の丸い、あるいは広がった筆を見ることができます。
▼おなじみヴィジェ・ルブランの作中にも
押し付けてバサっと広がる筆はもともと毛足が長い事と、筆先が広がる事で部分ごとの断面積が小さくタッチが柔らかいという特徴があります。
ドミニク・アングルは工程のほとんどを豚毛で描いたという話を耳にしますが、あの画肌を豚毛でなんて信じられない感はあるものの、我々が普段から使っている豚毛筆とは設計思想の異なる“柔らかい豚毛筆”が使われていたんだろうと想像します。
もちろん絵具の組成が現在とは異なり柔らかであっただろう事も重要だと思いますが。
さて、いまいちどラポルトのフロッタージュ筆をよくみていきますと、コシを持たせる為か太めの硬い毛が混ぜてあるようです。
私としては細い毛のみにしてもっと柔らかくしたものを見てみたいところ。
細い毛はちゃんと枝毛になっています。
ブタの毛は先端が枝毛になっており、これが絵具の含みを良くしてくれます。良質な豚毛の筆やハケは先端をカットせず枝毛を活かしたつくりになっています。
いずれにせよこの手の豚毛筆の入手性は低いので、興味ある方は私かラポルトにお問い合わせ下さい。