西洋には「絵具(えのぐ)」に該当する言葉がどうも無いようで、しばしば調べ物の際に戸惑います。
そもそも絵具ってなんぞや。
ごく簡単にいいますと色のついた粉「顔料」と、これをペースト状にして画面に定着させる「展色材」とをまぜた画用の塗料。…と言えるのですが、展色材になにを使うかで絵具の種類が決まるという事にお気づきでしょうか。
同じ顔料でも、
展色材に油(乾性油)を使えば油絵具。
アラビアガム水溶液を使えば水彩絵具。
アクリルエマルションを使えばアクリル絵具。
…が出来上がります。
日本画で使われる「岩絵具」は「絵具」と付いていますがその実顔料でして、展色材である膠水とまぜて使います。
現代では各顔料それぞれにカラーインデックス名(Colour Index Generic Name (C.I.Name))という記号番号が振られており、チューブ絵具のラベルやカタログにはどの顔料が使用されているか判るようにこの記号番号が書かれています。
書いてないのは買わなくていいです。
PYはPigment Yellowの略。PGはPigment Green。白はPW、赤はPR、青はPB、茶はPBr、黒はPBk…てな具合で、後に続く数字は基本的に古くからあるものが小さい数字になってます。
色味に対して厳密なものでは無いので、かなり違う色でも同じC.I.Nameであったり、同じ色に見えても異なるC.I.Nameだったりします。
この記号番号が1つ書いてあれば単一顔料、2つ書いてあれば、その絵具は2種類の顔料を混ぜた混色からなるものだと分かります。
実際には製造ロットによる色ずれを補正する為に他の顔料足してるんだけど単一顔料として出してるものも多いはず。
カラーインデックス名が書いてあるのはわかっても最初はそれが一体何なのかさっぱりですが、気をつけて見ていれば、或いは気になった時に調べるなどすればよろしいかと。
http://www.artiscreation.com/Color_index_names.html
何の役に立つのかと申しますと、現代では旧来の色名を付けたいわばニセの色も多く、それらの判別要素の足しになります。
例えば硫化水銀が原料のバーミリオンという色は本来PR106ですが、同じ名の付いた絵具でもPR108と記されたのものがあれば、つまり中身はカドミウムレッドだなとわかります。
また、いつも使うお気に入りの絵具に使われている顔料、つまりC.I.Nameがわかっていれば、他社製品を試す時など同じ組成のものを選ぶ事ができるでしょう。
顔料が同じであれば、使用感や混色時の変化なども近いはずです。
私などは先日はじめて購入したREMBRANDTのチタニウムホワイトのラベルにPW6/PW4と書いてある事に後から気づいて「なにこれジンクとの混色!?」とズッコケる事ができました。
賢い皆さんは購入前に確認してください。