各種油の黄変度 (準備編)

毎度ものすごく簡易的で信憑性に欠けますが、手持ちの乾性油をキャンバス(フナオカF No.2フラット 鉛白油性地)に滴下して乾燥のテストなどやってみております。
この時期、非加工の乾性油単体ですとひと月たってもゼンゼン乾きません。
筆で塗ったものではなく「滴下」してナイフでちょこちょこっと広げたものですからね。
ただし画像からもわかると思いますが、部分的に吸収されて光沢を失ったものも非加工油には多く、このツヤの引いた部分を「乾燥した」とみるのであれば、二週間以内で部分的に乾いたものもあります。

20日後、全体的に指触乾燥していたのは以下のみ。いずれも加工油ですね。
・マツダ サンブリーチュドリンシード
・マツダ ボイルドポッピー(べとつきあり)
・クサカベ サンシックンドリンシード
・ホルベイン サンシックンドポピー
上記以外の、主にスタンドオイル系や生ポピー、サフラワーなどは、吸収されてしまった部分や薄い部分以外、一ヶ月たった今も乾いておりません。
マツダの加工油、「サンブリーチュド」「ボイルド」の二種は国内他社では見かけず、個人的には特殊だなと感じております。▲真ん中2つは瓶の奥行きが薄く油の色も薄く見えるので斜めにして撮ってます

生のリンシードオイルとポピーオイルでは前者の方が乾燥は早いのですが、マツダのボイルドリンシードとボイルドポピーでは乾燥速度が逆転しておりポピーの方が早く乾きます。
色味もボイルドポピーの方が若干濃いめ。
ボトルの説明を見ると以下の違いがあります。

ボイルドポピー:熱した空気を吹き込みながら長時間ボイル
ボイルドリンシード:乾燥剤を加え比較的低温でボイル

どうも製法が同じではないんでしょうか。
また同社のサンブリーチュドリンシード、サンブリーチュドポピーは、共にサラサラで色も薄く、他社のドロっとした褐色の”サンシックンド”オイルとはまるで異なります。
こちらはリンシードの方が乾燥は早くなっています。

ところで、サンシックンドオイルとサンブリーチドオイルの違いは何でしょうか。
あるサイトでは透明容器に入れた乾性油を太陽に晒したものをサンブリーチド、水に浮かべて太陽に晒したものをサンシックンドと説明しています。
しかしながら海外ではトレイに油のみを入れて太陽光に晒したものをサンシックンドとして販売しているメーカーもありますし、両者を明確に区別はしていない様です。
特殊といえばサンシックンドのポピーは知る限りホルベインのものしかなく、これは海外サイトを探しても見当たりません。

▲左は地元画材店でホコリかぶってたもの。いつの製品かわからんが蓋のパッキンがコルクでできている。粘度が高くなっているが色味は右側の新品とほとんど変わらない

乾燥が早いポピーというのもある程度需要はあるんじゃないかと思うんですが、上記製品は市販のサンシックンドリンシードと同じように水分を飛ばす加熱工程を経ている為か、琥珀色になってしまっています。
透明なものが欲しい場合は自分で日に晒しておけばいいので、海外ではみんなそうやってるんでしょうか。意外とサンシックンドリンシード製品も少ない様に思えます。

水を使わない手法であれば、トレイに出して日向に置いておけばいいので簡単ですからね。
ただ小尾修さんの話では、水を使った加工の方が乾燥は早いという事でした。
さて、樹脂や乾燥剤を添加した状態での各種乾性油のテストなど、やってみたいというか知りたい事は多いのですが、だれか手伝ってくれませんかね。

[続編]
各種油の黄変度
各種油の黄変度 のつづき

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“各種油の黄変度 (準備編)” への7件のフィードバック

  1. 樹脂や油の種類の豊富なクレマー社でも、ウォルナットの日晒しはありますが、ポピーはないようですね。アンバーワニス、ブラックオイル、カナダバルサム、ストラスブルグターペンタインまでありますが。荏胡麻油や桐油、ひまし油が売られているとは。他にも、聞いたことすらないものがたくさん・・・。
    サンシックンドとサンブリーチードの区別、私も知りたいと思っていました。
    あまり厳密な区別でもなさそうですね。

  2. >憂愁庵人さん
    サンシックンド加工には時間はかかりますが、ボイルなどと違って加工時の危険性は低いですし、誰でも作れるので製品化する必要が無いといえばそれまでですけどね。
    サンブリーチュドはマツダしか知りませんので、それとサンシックンドを比較すると以下のとおりです。
    ・サンシックンド=高粘度、乾燥早い、琥珀色(市販品)
    ・サンブリーチュド=低粘度、乾燥早い、未加工油に準ずる色
    製法の詳細については不明です。

  3. こんにちは。小尾さんのブログではサンシックンドオイルを自製する利点は透明なものを得られるところにある、とありましたが、ボイルしたものとしないもの、堅牢性に差はあるのでしょうか?
    加熱しないものは水分を飛ばす工程がないわけですから、例えば絵具を練るときに、水分も一緒に練り込んでしまって固着力に影響したりとか、将来画面に悪影響を及ぼしたりする可能性もあるような気がするのですが。
    高森さんの自作サンシックンドオイルについて解説しているサイトでは、保管中瓶を割らないため過酸化物を減少させる、と書かれており性能については触れられていません。
    鳥越さんのお考えを聞かせていただけると嬉しいです。

    • こんにちは。正直、仰る二者間における堅牢性の違いについては全くわかりません。
      ただ私は水分についてはさほど気にしていないところがあります。というのも昔は鉛白の保管時、飛散防止のため水を入れていたという記録もある様ですし、絵具を練る際、ある程度水で練った後に油を足してゆく手法がある事も知っていますし(水がどんどん追い出されて出てきます)、更には筆を水に浸して柔らかくしながら油彩で描いた絵は、10年近く経過して不具合は起きていません。
      もっとも、親水性の顔料の場合は油より水の方が顔料にくっついて残ってしまうかも知れませんので一概には言えないのでしょうが。

      国内のサンシックンドがかなり濃色なのに対し、海外産は蛋白なものが多いです。おそらく加熱温度や時間が異なるのではないかと思いますが、温度と時間が堅牢度にどう影響するかの比較検証は大変な労力になりそうです。
      心配でしたら水を使わないサンシックンドを試してみられてはいかがかと思いますが、小尾さんによると水を使わないサンシックンドは乾燥が早くなる感じが無かったとの事でした。
      現代ではガラス容器で作る人が大半ですが、かつての資料には鉛の容器に油を入れて日に晒す手法も記されていた様で、そちらですと雰囲気的に水を使わずとも早く乾く油ができそうな気もしますがまだ試した事はありません。

      お役に立てず申し訳ありません。

      • ご返信ありがとうございます。
        とんでもないです。
        水を弾くからこその利用法なんてものがあるんですね。筆に水を吸わせ柔らかくしてから描くというのも初耳でしたが、豚毛なんかは確かに柔らかくなりますね。もちろん水を含ませた後は軽く拭ったりするのでしょうが。まさか水に浸して描くわけではないですよね。
        そんな描き方をしたら吸収性の下地なんかだと水分が吸われてしまって後で亀裂が入ったりしそうなものですが…。描いているうちに水分は飛んでいくから問題ないのですかね?

        いずれにしても多様な利用法には驚かされました。
        色々試してみようと思います。
        ありがとうございます。

        • まさか水に浸して描くわけではないですよね?と書きましたが、鳥越さんの返信には水に浸してと書かれていました。
          失礼しました。
          自分の発言のニュアンスとしては水彩みたいに(?)筆から水が滴るほど浸すわけではないだろう…ということでした。
          筆を柔らかくするだけなら、豚毛に水を吸わせ布で軽く拭えば十分な気がします。
          その辺りの細かいやり方は知識がないものでわからないのですが…。

          • 水は仰るとおり豚毛を柔らかくする目的で浸し、容器の端で軽く水を切って使います。
            吸収地に水が染み込むような事はしたくありませんね。油性地にしか使えないと思います。
            水を油で封じ込めるのは良くないので厚塗りは禁忌となります。
            描き心地としてはダマが出来て相当難儀しますのでオススメとはいきません。
            まあほとんどの方は油彩に水を使うなんて考えもしないだろうしトンデモ技法だと思われるでしょうが、現に描けない事は無いって感じですね。

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