美術の窓への寄稿についてのお話はこちら。
寄稿記事では支持体についてかなり端折ることになったと以前申しましたが、古典的、伝統的な支持体については当ブログの書籍紹介にも載せている森田恒之著「画材の博物誌」をあたるべきです。特に絵描きは絶対読んで下さい。
今回のタイトル「現代的な支持体」と言っても新素材が開発されたとかいう話ではなく、今では一般的になった合板やMDFの木質素材、アルミ板なども現代的な支持体となり、上記の書籍には紹介されておらず別の情報源が必要になってきます。
その情報源が実に乏しく、現代的な支持体を使ってはいるが実は何もわかっていないという方も多い気がします。
かくいう私もよく解っていない部分は多いので、これから挙げていく情報源をどうにか読み解きながら勉強していきたいと思います。
・木質支持体について
私は合板・MDFの保存性に否定的ですが、これらの耐久性・保存製についてはGOLDEN社のJust Paintの記事に詳しい資料がいくつもあるので私がグダグダ言うよりも下記にリンクを挙げていきますのでgoogle翻訳にかけて読まれた方が良いでしょう。
まあ大抵は同社のアクリルプライマーを塗っておけ。みたいに解決される事が多いのですが。
下記リンク先には寄稿記事にも書いた「合板は丸太から桂剥きされる時点で外力により微細な亀裂が入っている」という事について書いてあります。
耐候試験の結果も示してあるので参考に。
結論として合板よりもMDO(Medium Density Overlay)を使うべきだと述べられていますが、聞き慣れないこの板材については別の記事でも解説されています。
合板を芯材とし、表面に樹脂を含む紙やプラスチック、金属のシートが接着されたものという事です。
これを支持体とした作品は見たことがありませんし、アメリカでも珍しいもののようです。日本では手に入らないかも知れません。
屋外での使用を想定したものである事から耐候性も良好だそうです。
MDF(中密度繊維板)はハードボードよりも水分吸収がされやすく、また反りやすい。厚みを増す事で反りに対応する事はできるがカビの問題は残る。合板は吸湿時の寸法安定性に優れるが依然として湿度に対する問題は層の分離などの症状となって表れる可能性もある。などの情報を以下では読むことができます。
いわゆる「パネル」も安定しているとは言えないようです。
上記で紹介されているAmpersand Artのサイトは下記ですが、「13層の白樺合板を使ったパネル」は見当たりませんでした。特注品について述べてあるのでしょうか。
・アルミ支持体について
Just Paintには木質素材に限らず金属支持体についても非常に詳しく書かれた記事や注目すべき実験結果があります。
はっきり言って私程度のにわかがまとめた情報など出る幕がありません。
お茶を濁す程度にしか触れなかったアルミ支持体についても、下記など翻訳して目を通しておかれるのが良いでしょう。
記事にも書いた通り、アルミ複合板は国内でも看板の支持体として、あるいは建材としても流通しています。
海外ではACM(aluminum composite material) panelと呼ばれ、油彩画の支持体としても販売されています。
以前も述べた気がしますが、アルミ支持体についてはアルマイト処理されたものが多孔質であり適すと海外の技法書にあったと記憶しますが、市販のアルマイトはその孔を閉じる処理がなされており、アルマイトが多孔質であるというのは半分正解だが手にする事ができるアルマイトは多孔質ではない。というのが正解のようです。
よって封孔処理がなされる以前のアルマイトが手に入れば、もしかすると支持体として優秀なのではないかと思っているのですが、10ナノメートルという孔が果たして油彩の引っ掛かりとして適すのかどうか、専門家に伺ってみたい事ではあります。
どなたかアルマイト工場にお努めの方、いらっしゃいませんかね。
おまけ銅板支持体について
以前も書いたかも知れませんが、銅板の新素材も開発されています。
上記で紹介したACMパネルの片面を銅板に置き換えたものです。ポリエチレンのコアをアルミ板と銅板でサンドイッチした形になります。