潰れた皿のナゾ。

ウェブギャラリーの方のトップ画像更新しました。
以前シャルダンの画集をながめていて思ったのですが、コップなどの縁を垂直方向に潰して描かれてませんか。
「不自然だ!」というほどの事ではないのですが、若干気になります。

▼コップの口、縁の線がまっすぐ。さらに水の線が水平すぎる

▼銀のゴブレットと右のお椀、縁がほぼ水平です

17世紀あたりの作品が載った画集をパラパラと見ていると、どうも同じ様にコップの縁や皿の縁が歪んでるものが多く見受けられます。
円盤形というのは微妙な曲線を描かねばならず、自分でやってても難しい形ではあるのだが…
余り形にこだわらない作家が多かったのでしょうか。

▼Georg Flegel [German 1563_1638]
ドイツの画家ですが、ビミョウですかね

▼コップの底を見ると楕円なので、皿ももともと楕円なのではなく丸い皿なのでしょう。

▼Clara Peeters[1594-1657]
フランドル(今のベルギー)の女流作家。

▼Nicolaes Gillis[1580-1632]
Haarlem(オランダ)の作家。1610年の作。

 

▼同じ作家の1630年以降の作品らしい…けど、こちらの皿は歪んではないですな。構図による違いか、年齢による画風の違いか…

▼Francisco de Zurbaran[1598-1664]
壺やコップの縁は気になりませんが、特に右の皿が歪んでるような

▼やはり皿が潰れてます。コップの縁は耳(取っ手)の位置に影響されてか、右上がりに

手持ちの資料が無いので適当にネットで検索したものだけ載せましたが、17世紀あたりの静物画(や風俗画)の画集をお持ちの方は注意して見てみてくださいまし。
17世紀あたりと書きましたが、時代が関係あるのかどうか、あらゆる資料を調べたわけではないので分かりませんが。
はてこの歪んだ皿には何か意味があるのだろうかと、ごく狭い範囲でしばし話題になったのですが、結局どうもよくわからんままです。
いくつかワケを考えてみました。

・歪んだ皿やコップや燭台ばかりだった
これはさすがに不自然過ぎるでしょう…
しかし当時は全て手作りな品ばかりだったワケで、そもそも多少歪んだものばかりだったのでその点気にしていなかったという事はあるかも知れません。

・特に意味はない。指摘しないと気づかない人が多いので、絵画の要素として重要ではない。
理由なしに多くの作品で円盤が潰れてしまっているならば、特に気を付けなければ「そうなってしまう」という事でしょうか。はたまた円盤形の描写が難しいものであるという事の裏付けか…。

・描き方の、単なるひとつの傾向であった。
昔は工房での製作が主だったろうから、変に受け継がれたものか。
果物の絵に見られる、やたら透明に描かれたブドウの様に「これの描き方はこう」の様な流行めいたものがあったのでしょうか…。

・意図して歪められた。
どんな意図があったのか興味をそそられますな。
これは画家の古吉さんの見解ですが、「皿に盛ったものをよく見せようとすると上から見下ろした形にした方が良いが、そうすると構図的に奥行きが取れない為に皿の前後(上下)を潰して描いたのでは」との事で。
なるほどです。
全てのパターンに当てはまる訳ではありませんが、意図的に歪ませるとするなら、そのような理由からでしょうか。
解けない謎というのはそもそも設問が間違っているという可能性もありますが…
思うところのある方、ご意見くださいまし。
追記:この件に関して古吉さんにより分かり易い記事を書いて頂きましたので是非ご訪問下さい。
こちら

キャンバス梱包法

さて今回、東京へ送る作品は額装ナシという事で作品本体のみを梱包して送らねばなりませぬ。
どのように梱包したものかとしばし考えておりましたが、画期的な方法を考案したのでここに公開し、今年の学会に発表してノーベル賞を狙おうと思います。
使用する材料は
・ウレタンフォーム(画像左 カット済み)
・PPバンド(画像右 真ん中のパーツはストッパー)
・ダンボール

の3つ。

ウレタンフォームというのは断熱材で、まあ発泡スチロールのきめ細かいやつくらいに思ってください。

今回はウチに余ってた20mm厚のカネライトフォーム(商品名)を使用。
1820x910x20(mm)のもので、一枚1,000円くらいかと思われます。
大抵のホームセンターで手に入るでしょう。
ウレタンフォームより発泡スチロールの方が安いかと思いますが、専用の電熱線カッターを使って切らないと、普通のカッターなんかで切っていたのでは静電気でまとわりつく粉が大量発生してしまって収集つかなくなるので注意。

PPバンドというのは、よく梱包材でみかけるポリプロピレン(PP)製のヒモで、プラスチックの小さいパーツ(ストッパー)をくぐらせ固定する。
手でもってかなりギュッと強力に締め付ける事ができる。
画像のものは100m、ストッパー50個入りで500円。
まずはウレタンフォームを50mm幅くらいにカット。
カッターで楽に切れます。若干浅く切れ込みを入れた後に山折りにパキっと折ると簡単。
次いでそれを作品の辺の長さに合わせてカット。
若干短めにするのがコツ。
出来た4枚のウレタンフォーム板で作品の4辺を囲い、PPバンドでゆるめに締め、そこで四隅にダンボールの当てを挟み込み、ギュッと締める。
バンドの締め方はここあたりを参考に。

▼こんな感じ。(…ってこれは本締めした後に撮影したので前面が下になってますが最初組む時は当然前面を上にしませう)

作品を立ててもバラけない程度に締めたら、バンドの位置と作品の位置をウレタン板の中央付近に揃え、最後の締めを行う。
角に最も力が加わるので、辺の中央付近はウレタン板が作品から浮いた様になる。

▼締める時は手前のバンドを押さえつつ、こん限りの力で水平に引っ張る。


これで作品の前面・背面が浮いた構造になり、キッチリ締めていれば相当な力を加えても作品はズレない。

▼背面
▼前面

▼角はPPバンドがめり込むのでダンボールを当てる

後は保護の為、適当な大きさにカットしたダンボールを作品の表側にあてがい、PPバンドで縛る。
この時、辺の中央の浮いた部分も密着させ、より堅固な梱包となる。


全部完成。
小さい作品は前面保護ダンボールを締めるバンドを1本にしてます。


あとはこれを大きいダンボール箱に緩衝材と共に詰め込むだけ。
横に寝かしても大丈夫かと思われますが、まあ縦にした方がよいでしょう。

油の配合


油絵の描画に使う溶き油(※メディウム)は、50mlの小さいビンにちょくちょくと配合して使っております。
攪拌する前は見事に分離して、なるほどこんな比重だったのかと改めて観察してしまった。
ビンの上から
テレピン
フラマンシッカチーフ
リンシードオイル
スタンドリンシードオイル
ベネチアテレピンバルサム
…の順。
(一番下の白い部分は、ビンの底)
配合比が分かるかな…。
樹脂・乾性油・乾燥剤(“マンガン”かな?)の混合液であるフラマンシッカチーフが上の方なのが意外。
あ。これ自体にテレピン入ってるからか。
※溶き油と書くと絵の具を薄める為の油と思いがちだが、絵の具に添加して伸びやツヤの調整、また堅牢性を与える為のもの。基本的に「揮発性油」「乾性油」「樹脂」の三種を配合してつくる。

ライティング考察

9月頃にライティングに関して考えてた時に自分の覚え書きも兼ねて書いていた記事、それが放置状態だったのでちょっとまとめて公開。
昼夜問わず同じ環境光の元で描きたいと思い、光源について長らく考えていた。
手っ取り早いのは昼間から雨戸を閉め切り、蛍光灯のあかりだけで製作を続けることで、しばしばこの方法で描いてきた。
しかしながら手持ちの蛍光灯のあかりは、やはりどうも自然光と比較すると不自然であり貧相でもある。
また私の好きな「暗めの絵」を描くのには、モチーフを照らすあかり(スポットライト等)とキャンバスを照らすあかりを別個に用意したい。
はてさて予算を抑えつつ導入するにはどのような光源がよいのか。
蛍光灯の管(蛍光管)にもいろいろと種類があり、中でも「高演色AAA」とか「色評価用」の表記がある蛍光管はより自然光に近いスペクトル分布を示すらしい。
これは丸形管の製品はなく直管オンリーで、しかもその辺の家電屋には置いてない。
[参考]http://www.akaricenter.com/chokkan_tokusyu/irohyouka.htm
モニターのキャリブレーション(色調整)や写真撮影には絶対的に高演色を謳った蛍光灯が有効らしいが、はたして人間の目で見る場合にどうかというのは、よくわからん。
直管型の蛍光灯器具があれば、いっちょ買ってみるんですがね…
スポットライトと言えば、やはりハロゲンランプでしょうか。

こちらは色温度が3000~3600K程度と蛍光灯より低く赤みのある色で白熱灯に近い。
しかしスペクトル分布は蛍光灯よりはるかに自然光に近い模様。
白熱球と同じく発熱量が多いようだが、ダイクロイックミラーという複層塗膜の反射鏡を内蔵した「ダイクロハロゲン」(上記画像)なるものであれば、熱線を反射ミラー後部へ逃がしてくれるので照らす対象物は比較的熱くならずに済む。
ハロゲンランプの取り付けは、クリップライトがお手軽。
電源コードと中間スイッチ付のものであれば工事もいらないしスイッチ一つでON/OFF可能。
しかし下の図、左側の様にランプを取り囲む形に反射鏡のついた器具にダイクロハロゲンを取り付けても、せっかく後ろに逃がした熱線を再反射し前方へ放射してしまうので普通に考えて意味がない。
熱のこもらない様、右側の様にランプが開放的なものの方が良いだろうと思われる。

楽天などで「クリップ」「ハロゲン」のキーワードで検索すると、ハロゲンランプ(ダイクロではない)付きのスポットライトが2000円以下で購入可能である。
ダイクロハロゲンがよければランプは後から交換すればいい。
ただし、ハロゲンランプは口金の種類が特に多様なので交換時は注意が必要である。(といってもE11が主流なのかな?)
[ハロゲンランプの型番・口金タイプ]
http://www.akaricenter.com/mame/mame_harogen_buy.htm
口金は多様だが100V/110V、12V用の球がある。
12Vの球は通常100Vの電源にトランスを噛ませて12Vに落として使用するが、事実上100Vよりも消費電力を押さえられ、12Vの50W球で100Vの75W球並の明るさを得られるらしい。
クリップライトもいいが、モチーフ設置場所がアル程度決まっているのであれば、ダクトレールを設置するという手もある。
レールの範囲内であれば自由に照明器具を移動できるし、器具の追加も容易にできる。アダプタを使えばペンダント式の照明や蛍光灯も取り付け可能で、またダクトレールから電源を取るコンセントアダプタもある。
上の画像は蛍光灯のひっかけ電源部に後づけできるタイプのダクトレール。
これだと工事の必要はないが、壁などに蛍光灯を付け消しするスイッチのある環境でないと使えない。(リモコン式のダクトレールもあるのでそれだとタブンOKだが、かなりお高い)
工事をせずに安価にダクトレールを設置しようと思うならば、下記のようなものもホームセンターで入手可能。ELPA ライティングバーシステム
天井の適当なところにネジで留め、コンセントを挿せばいい。
ライトは市販のダクトレール用のものが使える。
なにぶん金がないのでモノを買うのには勇気がいる。
かなり検討した結果、ワケあってお安く手に入れられる某メーカー製の、ダクトレールを買って自分で適当に設置する事にした。
まだあかりの問題が完全解決したとは言えないが、一応モチーフを照らすあかりを得る事はできたので、その話をまた次回。

未熟の柿


サイズ: M8号(455×273mm)
キャンバス:トークロ
庭にある渋柿。
柿本体は結構日持ちしてくれるが、葉っぱはやはり1日経つと形が変わってしまって難儀する。
完全には熟れてない黄色と表面についた白い粉、粉の取れたところの光沢が魅力的。

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