岩田榮吉(いわたえいきち)という方がおられます。
享年53歳。
トロンプルイユ=Trompe-L’oeil(目だまし)について調べていますとたびたび目にする事となるこの画家は、数少ない日本人トロンプルイユ画家のひとりとして今では知る人ぞ知る存在です。
歌田眞介氏の著書「油彩画を解剖する」の中で、「なぜフランスで活動しているのか、日本でも描けるのではないか…」という筆者の問いに対し、「どうしていいか迷ったとき、ルーブルに行けば必ず解決方法がみつかる」と答えたという岩田の言葉は妙に私の記憶に残り、後に手にした画集ではフェルメール好きが高じて「牛乳を注ぐ女」に描かれた滴る牛乳を監視員の目を盗み密かに舐めた経験を持つという変人ぶりが紹介されていたりと、奇妙な雰囲気を醸す画風とも相まって印象深い絵描きなのでありました。
船橋東武百貨店における展示期間中のある日、早くから訪ねてこられた初老の紳士に名刺を渡されこう切り出されました。「岩田榮吉ってご存知ですか」
「ええ、知ってますとも」
「私の嫁が岩田の姪にあたりまして、保管していた作品を展示するための美術館を今年オープンしました」
なんとも驚き興奮しましてその後ひとしきりお話をしたのですが、つい今年の5月、横浜の本牧(ほんもく)というところに開館したその美術館「横浜本牧絵画館」には、岩田榮吉の作品70点余り(恐らくデッサン等含め)が所蔵されるとの事。私は全く知らずにぼんやりと過ごしておりました。
また館長を務められるその紳士は、ネットで見かけて以来わたしのトロンプルイユ画に興味を持ち、こうして休館日に船橋まで出かけてこられた事、そしていずれ当方の作品も展示する機会をとの考えをお持ちである事などを告げられました。
興奮しきりで是非是非!と、船橋での会期終了後に立ち寄らせて頂く事をお約束し、後日、横浜へ。
駅からバスで25分ほどに位置するその場所は、岩田榮吉に縁のある地との事です。
訪れた時は「岩田榮吉の世界II」と題した開館記念展第二弾の最中。こちらは2018年1月28日まで開催されています。
入館料500円を支払っておりますと奥から館長が出てこられ、専属の解説員として館内と作品の案内を頂きました。また岩田榮吉の姪にあたるという奥様も紹介頂き、絵画館設立と展示にあたって苦心されたお話や、いくつかの作品は保存状態が悪く修復が必要であったお話など、いろいろと裏事情も伺えました。
やはり我々のような人間はキャプションの情報より、このように関係者からお話を聞ける機会がないといけない。
何にも増して、岩田榮吉の作品を間近で見ることが出来たのは幸運でした。
館長のお話では今後トロンプルイユ画を描く日本人作家たちを集めた企画展示を考えておいでとのことで、そうなれば私も他のトロンプルイユ作家とのつながりを持てるかもと相当に期待しております。
今回のご縁には深く感謝すると共に、是非とも早期の実現をと願って止みません。
横浜本牧絵画館
神奈川県横浜市中区本牧元町40-7
電話 045-629-1150
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 毎週火曜日
観覧料 500円 (保護者同伴の中学生以下無料)
関連サイト:岩田榮吉の世界
保存
鳥越先生
横浜本牧絵画館です。先日は、当館にお越しいただき、また、
このようにブログにてご丁寧にご紹介いただき誠にありがとうございました!
当館のスタッフで読ませて頂き、スタッフ一同とても喜んでおります。
当館も、鳥越先生の作品を展示させて頂けること、
また少しでも多くの方に鳥越先生の作品や、トロンプルイユ画というものについて
知って頂けたらと思っていますので、今からとても楽しみにしております。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます!
お邪魔した際には丁寧にご対応頂きましてありがとうございました。
トロンプルイユ画や岩田榮吉をキーワードに新たな繋がりが得られた事には喜びを感じずにいられません。
これからさらに広く、面白い方向へ展開してゆけたらとワクワクしております。
今後も何卒、よろしくお願い申し上げます