高演色LEDと言えどその演色性はいまだ高演色蛍光管に及ばず、にもかかわらず蛍光灯照明を全滅させLED化しようという圧力たるや、Ra99の高演色照明環境を整える環境は年々悪化の一途。
ほんとにもう瀬戸際で、三菱、東芝、日立は既に高演色蛍光管から手を引いてしまい市場に出回る在庫のみ。残るはパナソニックだけという状況。
その高演色蛍光管を唯一最後まで生産している一流メーカーですら「蛍光灯よりLEDの方が色がよく見える」みたいな自社製品を貶める分裂症気味の宣伝でLED製品を推している事には驚きます。
そういうの、良くないとおもう。
▲上記はわざわざ演色性の低い「白色蛍光灯」と比較しているが同社はRa99の蛍光管を生産している。また一般家庭で普及している同社製三波長蛍光管の演色評価数は84であり、上記「LEDデスクスタンド」に勝る。
しかしながら我々絵描きの製作用途や絵画鑑賞用途としてLED照明に利用価値が全く無いと主張するわけではありません。
かくいう私自身、少し前に行った船橋東武百貨店での制作実演にあたってはイーゼルやモチーフを照らす為の照明としてLED照明を導入しました。
コンパクトである程度の演色性を持ち、かつ白熱球よりも色温度が高く入手性の良い照明となるとLEDを当たるより無いであろうというあたりに落ち着き、常用ではありませんが当方もついにLEDに手を出しましたので、それらの紹介とレビューをして参ります。
・東芝「キレイ色」LDA9N-D-G
まず高演色LED電球として有名な東芝の「キレイ色」ですが、結果から言うと私の用途としてはまるでダメでした。
パッケージの退色具合からして恐らくデッドストック品と思われる安いものを買ってしまったので、もしかすると新しい現行品は優秀かも知れませんというフォローを一応入れておきます。
点灯しているうちに違和感を覚え、2つ購入したものを比較すると片方が明らかにマゼンダ寄り。個体差かと思いきや、点灯してからの経時=温度上昇による色温度変化でした。
その経緯をTwitterで呟いています。
個体差ではなく経時変化だと判明。LEDの問題の一つ、熱を持つと暗くなり赤に傾く。しばらく点灯して赤くなったものと点灯してすぐのものとを比較したので色味が違ったというわけ。画像は左から右へ15~20分間隔。少しずつ赤く暗くなりある程度のところで止まるぽぃ pic.twitter.com/dIahqaKoK1
— 鳥越一穂 (@torilogy_) 2017年10月7日
この色温度の変わり具合と時間経過後の色味はちょっと許容範囲外です。
こういった製品は中身の部品がロットごとに変わったりしてるかも知れませんね。機会があったら新しく出荷されてそうなものを試してみたいと思います。
・GoodGoods LD-84ZB 昼白色
キレイ色の結果を受けて落胆していますと、ほどなく私が知らなかった別商品に関するツイートが流れてきたので早速購入。
GoodGoods製 LD84-ZB 昼光色
一つ1000円以下ですが、amazonの方が送料分お得。
こちらはなかなか良い感じでして、下図に私の油彩画を照らし15~20分おきに撮影したものを並べて比較していますが、時間経過による変化は少なく感覚的にはわかりません。安いし軽いし明るい。と、現状ではこちらをおすすめします。
若干ジーっという音がでるのが惜しいところ。
Twitterでキレイ色との比較などしてますのでよろしければ下記参照下さい。
東芝キレイ色と比較。熱を持つ本体がたぶん陶器製の東芝に対し樹脂製でチャチだが軽い。口金の処理はグッドグッズの方が上品。少し明るいですね。
左:キレイ色 右:グッドグッズ pic.twitter.com/wXZbF6om8E— 鳥越一穂 (@torilogy_) 2017年10月15日
そして同じくTwitter上ではこの製品の演色性を機器で計測した結果を公開くださった方がおられます。ありがたや~
・リュウド RE-TL520-2050
LED電球を試す以前に実はバカ安なダクトレール用のLED照明を見つけたので購入しています。
こちらのREUDO(リュウド)の製品、ダクトレール用の高演色LED照明としては破格の3,000円でありながら、なかなか良い印象です。
高演色Ra93 ダクトレール用LEDスポットライト CREE LED(COB) 昼白色(5000K) 1400lm 20W 店舗照明用
ただ2017年12月現在、上記の直販サイトでは品切れとなっています。
amazonには少し在庫があるようなのでそちらからどうぞ。※2018.1.30時点で売り切れ
商品説明にはRa93とありますが、本体と外箱に貼られたシールにはRa90と書かれています。
いずれにしてもハロゲンランプより色温度は高く演色性もなかなか良いと思いますし、経時による変化も知覚できない範囲に収まっています。
本体がかなりデカイのですが四角い部分が水平に回転し、ランプ部分が垂直方向に回転しますので可動範囲が広く自由が効きます。
難点としてはダクトレールとの接触部分の作りが甘いのか四角い部分を回転させるとある位置で消灯してしまいます。
1400ルーメンとの事で50wのハロゲンランプよりもかなり明るいです。
1コアでマルチシャドー(影が幾重にも映る現象)もなし。
大手メーカーですと3万円くらいするダクトレール取付用の高演色LEDスポットライトが3,000円で試せる、実にお手軽お買い得な製品です。
・山田照明 Z-Light Z-80 pro
20型の高演色蛍光管が取り付け可能なデスクライト「Z-208」を提供してくれていた山田照明でしたが、ついに製造中止に。もう国内に高演色蛍光管が取り付け可能なデスクライトを提供するメーカーは無くなってしまいました。
私の制作環境におけるZ-208の活用っぷりについてはコチラの記事を参照下さい。
その最後の砦であった山田照明が作っている高演色LEDデスクライトがZ-80 proです。
演色評価数はRa97と数値的には抜きん出ていますが特殊演色評価のR12が70チョイと伸びず完璧とは言えません。ちなみにPanasonicの高演色蛍光管(Ra99, 5000K 昼白色)のR12は94。
現在はより照度が高くなりクランプ形状が変わった後継機Z-80 pro IIが販売されていますが演色性は変わらない様です。
価格は2万円前後とお高めですが、2017年12月現在は後継機の方が安く手に入ります。
商品の印象としてはとにかくコンパクトで軽い!明るい!アームが滑らかに動く!
これで高演色蛍光管と同等の演色性があれば良いのに。(私の目でその差が判別可能かどうか判りませんが)
経時による変化も知覚できない範囲です。画像は左から30分おきの撮影。色温度高めですね。
・最後に
色の違いを見てみます。
「このように見える」を再現したものでは無く、あくまでも照明による差を示すものです。落第点の「キレイ色」は不参加。
左上が私の常用光源である高演色蛍光管です。
高演色を謳う照明でも結構違いますね。なんつってもRa99の高演色/色評価用蛍光管でもメーカーによって色味違いますから。
今回取り上げたLED照明群は理想の光源とは言えませんが、現在最も普及している家庭用の蛍光灯と比較すると演色性は高いものばかりです。
また価格も最後のZ-80 proを除けば1,000~3,000円と安価なものばかりですので「普通の」蛍光灯を制作に使われている方や色温度の低い(赤っぽい)ハロゲンランプを使われている方は試してみる価値があると思います。
他にも目をつけているLED照明はありますので、購入する事ができればそのうちレビューしようと思います。
招来LEDに変えざるをえないけど、比較検討は面倒だし、そもそも電灯についてよく分かってないので、こういう画家視点のレポートは有り難いです!
私が試すのはいつも安物ばかりなので、もっと余裕のある方にいろいろ試してもらうのが良いのですが…。
今まで調べた中で最も演色性の高い部類のLED素子を作ってるのは京都に本社を置くCCS社なんですけど青木先生をけしかけて共同で製品プロデュースという案はどうでしょう。
それは全員がトクする良い案ですなあ。
「将来」が変換ミスしてましたな。
もちろん古吉さんと共同でと。
どこで売りましょうね?
私は光がよく分からなくて、科学的に「自然な光」と称して売られてるライトがゼンゼン納得出来てないので、参加しない方が良いでしょうねえ。
美術館の照明の色に苦情が出てるという話はあんまり耳に入って来ないので、こだわる人少なくて売れないかも。
コメント欄付近をカスタマイズ中につきゴチャゴチャしててすみません。
たしかに数は売れないでしょうね。CCS社もずっと以前に家庭向け製品を増やすというニュースがありましたが、高演色LEDを使った家庭用照明は現在作ってませんし。