ネットで海外の絵描き達を見ていますと実に「自分でやる。Do It Yourself !」的な感じが強く、色んなモンの自作例は大変参考になります。
その一つにイーゼルの自作があるのですが、私も見習って作ってみました。
先日の催事「船橋東武絵画市」では展覧会場での制作実演をかねてより計画していましたので、それに向けて小さな作品用に限定した運搬時に小さくまとまるものを設計しました。
出来上がりはコチラ↓
うーん、スタイリッシュ。
で、このコンパクトさに加えこちらのイーゼルが持つ特徴はカメラ用の三脚などに取り付けて使用する点にあります。
以下の動画で折りたたみ状態からの展開・三脚への取り付け・可動範囲などを御覧ください。
船橋での仕事を終えてから撮影したので絵具が付いてますがご愛嬌。
あと実は主軸を切り落とし、上記画像よりも短くなっています。
カメラ三脚への取り付けを可能にしているのは1/4インチネジの爪付ナット。
鬼目ナットと呼ばれるものと同様、めねじ構造になっておりボルトをねじ込む事ができるパーツです。
木工用で爪付きナットはハンマーで叩き入れるタイプ、鬼目ナットは六角レンチでねじ込むタイプになります。見ためがスマートなのは鬼目ナットの方。
M5やM6などと表記されるミリ規格の爪付きナットや鬼目ナットはホームセンターなどで簡単に手に入りますが、カメラの世界で標準規格であるインチネジ規格のものは売ってません。ネットでやっと見つけてもかなりお高い。ですので、私は中国から取り寄せました。5個入りが送料込みで300百円ほど。
eBayやAliExpressにおいて「1/4″ Tee Nuts」或いは「Wood Insert nut」などで検索すれば見つかります。
適当な大きさの12mm合板にドリルで穴を空け、先述の爪付きナットをハンマーで叩き入れたものが下の画像。爪付きナットが出っ張るのでザグリ加工してます。
これを何かに取り付ければ、どんなものでもカメラ三脚等に取付可能になります。
上記の板を反対側から見た様子。こちら側からボルトをねじ込む形となります。
以下は全てのパーツ。
木材には下記サイズの安価なSPF材を使用しました。
1×2(ワンバイツー=19x38mm)
1×4(ワンバイフォー=19x89mm)
本当はもっと硬い木で作った方が良いです。
右の方に見えるのはM6(ネジ直径6mm)ボルトに「ノブスター」を取り付けたもの。ボルトを手回しできるようになります。
小さい四角いものはM6の「四角ナット」。
まあ動画で説明するほどの構造でもありませんが、一応下記も参考にどうぞ。
主軸にはボルトを通す貫通した溝と、四角ナット用の溝が彫り込んであります。
こうする事でボルトを締めたり緩めたりの際にナットが一緒に回転するのを抑制し片手での操作が可能になります。
ボルトの締緩を両手で行う前提であれば蝶ナットを使えばよいのでこのような加工は必要ありません。出っ張りができてしまいますが。
よーく見ると主軸の先端に穴が空いていますが、これは1×2材を継ぎ足す際に出来たビスの跡です。
短く切り落とした主軸ですが、後で照明を取り付ける場所がなくなってしまった事に気づきました。むしろ短くするよりも片方は長くしておかなければならなかったのです。
主軸をまた作るのは面倒だったので1×2材を継ぎ足して使うことに。
とりあえずはコーススレッドで留めましたが、後でまた使うようであれば主軸に鬼目ナットを埋め込み手回しボルトで着脱できるようにしようかと。
コンパクトになるしこれはこれで正解だと思います。
上記のような具合に延長した部分にクリップライトを取り付けます。
クリップライトには高演色LED電球を取り付けましたが、この照明の件についてはまた後日。
イーゼルができましたらパレット台も必要ですよね。こちらもカメラ三脚に取り付けるものを海外の方たちを真似て作りました。
合板を下図のような形にカットします。こちらの寸法は430x300mm。
切れ込みの部分は適当ですが、Aの幅は取り付け位置の脚の幅に合わせ、Bの幅は脚の太さよりも少し大きめにとります。
軽くするために2.5mmの薄い合板を使用したので、裏面に12mm厚の合板で補強を入れてます。
補強を入れた部分に荷重がかかり、特に仕組みは無く上手い具合に三脚に固定されます。
このパレット台に紙パレット、メディウム皿、筆などが乗っかりますが、筆が転がらないように筆置きは欲しいところ。
冒頭でも述べた通り船橋東武にて実戦経験を経てきたわけですが、支持体を上下から挟んで固定する部分には問題がありました。
温湿度変化による微妙な膨張・収縮により(銅板は湿度には反応しませんが)強く締め付けたつもりでも翌日銅板が脱落して主軸に寄りかかる形になっていた事がありました。キャンバスのように厚みがあれば緩んでもひっかかって脱落する事は無いと思われますが、薄い支持体であるがゆえの問題でしょう。
改善策としては支持体を押さえつける部分に溝を切るか、フェルトやゴムのようなものをかませるかしないといけませんね。
最後はおまけ。モチーフ台です。
こちらもカメラ三脚で。
爪付きナットを取り付けたパーツ、あれを適当に切った合板にビス止めしただけ。
下図でもイーゼル同様、三脚へワンタッチで着脱可能になるクイックシューを取り付けています。
かなり小さいクイックシューなので安定感は幾分こころもとない。石膏像なんかは置きたくないですね。
というわけで、これらを参考に皆様はもっと良いイーゼルづくりに励んで下さい。