炭酸カルシウムを油で練る

日曜美術館で藤田嗣治が使った地塗りの再現シーンには保存修復シンポジウムで講演されていた木島隆康さんが出ておられました。
油で練った炭酸カルシウムと油絵の具の白を足して塗り…という工程です。この場合の「油」はもちろん乾性油で「白」は鉛白じゃなかろうかと思います。
しかしフジタの乳白色はどうやって作ったのかといろいろと取り沙汰されますが、バッキバキに割れてる事を追求しないのが謎です。

それは置いといて、「炭カルってあんなに褐色になるのか~」と古吉さんからメールで頂きまして。

そーいや「(炭酸カルシウムである)チョークは油と混ざると透明になるから下描きにイイヨ!」などと宣伝してるのですが、完全な無色透明になると思ってる方がいるかも知れないので一応ブログに載せとくか…。という事で手持ちの炭酸カルシウム類をリンシードオイルで練ってみた図がこちら↓

▲左から沈降性炭酸カルシウム、下地用ムードン、仕上げ用ムードン、チョーク

炭酸カルシウムを成分とする画材は色々ありまして、ムードン、スペイン白、方解石、大理石粉、チョーク、胡粉…と、どれも炭酸カルシウムのくくりに入ってしまいます。画像にあります「沈降性炭酸カルシウム」というのは、科学的に反応させて作られたものです。
より透明で、可塑性があり形を保持します。
“体質用”と表記がある通り、塗料の増量剤として、或いは透明度や粘度調整の為に混ぜられるとの事です。「ムードン」ってのは地名でしょうか。植物プランクトンの死骸が堆積し化石化した炭酸カルシウム主成分の地層を白亜と呼び、それを取ってきて砕いて地塗り用途にしたものがムードンやスペイン白として売られています。
仕上げ用の方が粒子系が細かいのですが、色味も明るくなりました。
粘度が高く、リンシードで練った鉛白の様に糸を引きます。「チョーク」はもともと前述の白亜を意味する言葉ですが、白亜を棒状にした筆記具がそう呼ばれます。海外はどうか知りませんが日本では石膏を使った柔らかいチョークもあるので「チョーク」と言っただけでは原料が何か判りません。上記画像のチョークは”シャンパーニュ地方の天然白亜”製。カッターでガリカリ削って油と練ってます。
色味や透明度はムードンに準じます。しかし柔らかいのですが糸をひくような粘度にはなりません。粒子経の違いなのか何なのか。

続いて地塗りしてないキャンバス片に塗ってみます。並びは前の画像と同じ。油の量が適当なので厳密に透明度の比較はできませんが、沈降性炭酸カルシウムがより透明って事は判ると思います。
沈降性炭酸カルシウムは光沢を保っていますが、ムードンは油が吸われてしまったのか表面のツヤがなくっています。一番右のチョークは糸引かないので油を多く足してみたりしたのでそれなりに光沢がありますが、翌日はこれよりつや消しになりました。
粒子の細かく揃っている沈降性炭酸カルシウムは油との結合が強いというか分離が少ないって事でしょうか。

水で練った場合との比較も載せておきます。
水練りの方が不透明で色も白いです。

左:沈降性炭酸カルシウム 右:ムードン
上から粉末、水練り、リンシード練り


ともかくこのようにまとまった量ですとチョークも褐色になります。
下描き線に使う程度だと油と混ざればほぼ透明になると同時に、チョークの粉はキャンバスに定着しておらず半分かそれ以上かは油の付いた筆の方にくっついて掻き落とされるという事もあって邪魔になりません。
水だとやっぱ少し残りますし筆に付いた方も白いです。

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