天然ウルトラマリンの抽出 ~篩い分けについて

話が多少前後しますが、論文にあるのと同じ「250メッシュ」という非常に細かい網目の金網を、10cmという短い単位で譲って頂ける店があったので購入し、篩を自作しました。
川西金網店
 購入品:「SUS316 綾織金網 線径0.04mm 250m/s」
 100×1000mmで1,300円。
 メール便での発送を相談したところ対応頂け、送料は180円。
ホームセンターにある塗料用の薄っぺらいポリ容器を買ってきて適当なところでカット。底を丸くくりぬき、そこへホットボンドで金網を接着して完成。
(下の方の画像を参考にしてください)
「メッシュ」というのは1インチ幅にいくつの目が並ぶかという事で(250メッシュならば1インチ幅に250の目が並ぶ)、その数値だけでは目開きが判らず、網目の指示としては不備があります。
論文では恐らくJIS試験用篩を使用したのではないかと思われますが、最近は改訂されたのかJISのHPをみても「メッシュ」での分類が見あたらず、目開きでの分類による一覧表があるのみです。
JIS試験用篩取扱店でメッシュによる古い表記(?)のあるものを見ると、250メッシュは目開き0.062mmとありました。
私が購入した金網も目開き0.062mmなのでヨシとします。
しかし使ってみた感じ、やはり0.062という目開きでは大きすぎる様で、自作粉砕器によって原石を砕いた粉を、乳鉢で擂らずにそのまま篩にかけても結構な量が通過します。
折を見てもっと細かい目の金網を調達したいところです。
砕いては篩にかけ…を何度か繰り返すうちに、ひとつ気づいた点が。
論文には以下の様にあります

最初の方で篩を通る顔料は青色が強く、最後のものはこれに比べて灰色みが強い。これは岩石を粉砕する場合と同じく、青色部分は、柔らかいため、いくらか先に粉砕され、逆に白色、灰色の部分の方がより硬く、粉砕されるのに時間を要するためと考えられる。

最初の方で篩を通る顔料の色味がより良いという感じはします。
しかし、その後比例的にどんどん色が薄くなっていく一方かというとそう単純なものではない様です。
篩を通らなかったものを見ると、白味の多い粉の比率が増えてゆきますが、同時に、ある程度大きさの揃った青い大きな粒も目立ってきます。
拡大画像を見ると判ると思いますが、小さめの粒は圧倒的に白が多く、反対に大きい粒は圧倒的に青と、二分化している様に見えます。青が柔らかく先に砕かれるのであれば、軒並み白より大きな青が残っているのはおかしいのではないでしょうか。
ちなみにこの時点で大きい青の粒のみを取り出して砕くと、篩い分け後半にも関わらず結構青味の強い顔料が得られます。(顔料状態では水色にしかなりませんが)
これはどういう事なのか考えてみましたが、青い部分が砕けやすく白い部分が硬いというのは実は逆ではないかと。
ハンマー等で砕く際には全く参考にはならないのかも知れませんが、モース硬度(引っ掻いた時のキズの付きやすさ)では青い部分=ラズライト、方ソーダ石、藍方石等は5以上、一方白い部分=方解石は3と、青い部分が硬い事になっています。
他に含まれる鉱物はパイライトが6-6.5、「含まれる場合がある」鉱石では斜長石、柱石などが6以上で、もしも「白い部分の方が硬い」のであれば、その白い部分は斜長石や柱石という事になるのでしょうか。
それらの含有率が通常どれくらいなのかは知りませんが。
思うに「メッシュを通るかどうか」と鉱石の硬度にはさほど相関性は無いのではないでしょうか。
真っ先にすんなり砕ける石があっても、破片の大きい石は通りません。逆に硬くても粉々に砕ける石であれば先に通過するはずです。
「白の方が先に砕けるが、青の方が細かく砕けるので先にメッシュを通過する」
という事もあり得るのではないかと思います。
なぜ大きさの揃った青い粒が「増えて」いくのか。
これについての考察は以下の通りです。
ある程度均一な霜降り状に、白い部分が混ざった原石がある場合、白い部分が先に砕けるとするならば、そのたびに同じくらいの大きさの青い粒がポロポロと出て来る。
もちろんこれは全てのラピスラズリ原石の篩い分けに当てはまるものではないでしょう。
たまたま今回私が使った原石がそのような性質だっただけかも知れません。
しかしながら、「青の方が先に砕ける」「最初に篩わけしたものの方が良い色である」という単純な事が全ての場合に当てはまる訳ではない…と言えるのではないでしょうか。

天然ウルトラマリンの抽出 ~問題-ダマができる

なぜかダマが出来る事がある。
沈殿した顔料同士が絡まってダマになる。
指で押さえながらすくい上げ、つまみこすりしてみるとなんだか樹脂のカスの様なモノが残る。
炭酸カリウム1%のお湯で洗っても消えず、仕方がないのでこつこつと指でこすって顔料を分離させる。
しかし上澄みを捨てた後にお湯を注ぐとまたも一気にダマが出来上がった。
お湯に反応している様だ。

天然ウルトラマリンの抽出 ~篩わけ

話が多少前後しますが、250メッシュという非常に細かい網目の金網を入手し、篩を製作しました。
細かいと言っても目開き0.065mmありますので、顔料の大きさから言うとかなり大きい目になります。
自作粉砕器によって原石を砕いた粉を、乳鉢で擂らずにそのまま篩にかけても結構な量が通過します。
250メッシュを通過させる程度の大きさで良ければ、乳鉢でゴリゴリ擂る必要はないでしょう。
砕いては篩にかけ…を何度か繰り返すうちに、当然ながら篩を通らなかった原石の大きさも徐々に小さくなるのですが、ひとつ気づいた点をば。
例の論文には以下の様にあります

最初の方で篩を通る顔料は青色が強く、最後のものはこれに比べて灰色みが強い。これは岩石を粉砕する場合と同じく、青色部分は、柔らかいため、いくらか先に粉砕され、逆に白色、灰色の部分の方がより硬く、粉砕されるのに時間を要するためと考えられる。

最初の方で篩を通る顔料の色味がより良いという感じはします。
しかし、その後比例的にどんどん色が薄くなっていくかというとそう単純なものではありません。
篩を通らなかったものを見ると、白味の多い粉の比率が増えてゆきますが、同時に、まだ砕かれておらずある程度大きさの揃った青い大きな粒も目立ってきます。
これはどういう事なのか考えてみましたが、どうも青い部分が砕けやすく白い部分が硬いというのは逆なのではないかと。
ハンマー等で砕く際には全く参考にはならないのかも知れませんが、モース硬度(引っ掻いた時のキズの付きやすさ)では青い部分=ラズライト、方ソーダ石、藍方石等は5以上、一方白い部分=方解石は3と、青い部分が硬い事になっています。
他に含まれる鉱物はパイライトが6-6.5、「含まれる場合がある」鉱石では斜長石、柱石などが6以上で、もしも「白い部分の方が硬い」のであれば、その白い部分は斜長石や柱石という事になるのでしょうか。
思うに「メッシュを通るかどうか」と鉱石の硬度にはさほど相関性は無いのではないでしょうか。
真っ先にすんなり砕ける石があっても、破片の大きい石は通りません。逆に硬くても粉々に砕ける石であれば先に通過するはずです。
「白の方が先に砕けるが、青の方が細かく砕けるので先にメッシュを通過する」
と考える事はできないか。
なぜ大きさの揃った青い粒が「増えて」いくのか。
ある程度均一な霜降り状に、白い部分が混ざった原石がある場合、その白い部分が先に砕けるとするならば、同じくらいの大きさの青い粒がポロポロと出て来て然るべきだろうと思われます。
この時点で青い粒より若干小さい目のメッシュを用意し、青い粒のみを取り出す事ができれば、最初よりもよい青が取り出せるかも知れません。
もちろんこれは全てのラピスラズリ原石の篩い分けに当てはまるものではないでしょう。
たまたま私が使った原石がそのような性質だっただけかも知れません。
しかしながら、「青の方が先に砕ける」「最初に篩わけしたものの方が良い色である」という単純な事が全てのラピスラズリ原石に当てはまる訳ではない…とは言えます。

天然ウルトラマリンの抽出 ~粒子径

ラピスラズリを砕くにあたり、「顔料は細かくするほど色味を失う」との事ですが、実際にはどうなのでしょうか。

色味に関しては毎度言ってる通りお使いのパソコンによって発色がまるで違うので参考程度にしかなりませんが、上記画像の左右で色が違う事は判るかと思います。
これ、元はまったく同じ物です。
右の顔料を、乳鉢でさらに細かくすりつぶしたものが、左になります。※
粒子径が細かくなるほど色が薄くなるというのは理解できますが、色味自体が変わってしまっていますね。
この現象は一体何なのでしょうか。
※右の顔料はラピスラズリを砕いて出た粉のうち、250メッシュ(空間目0.062mm)を通過したもので、乳鉢によるすりつぶしはしていません。顔料としてはかなり大きな粒子になるだろうと思います。
力が加えられる事によって何か化学変化を起こすのか。
はたまた摩擦による熱によって、顔料が「焼かれて」しまったのか。(ラピスラズリは熱に強いとの事ですが)
削られた乳鉢・乳棒の粉が、何らかの影響を及ぼしているのか。
以前、自分でラピスラズリを砕いて作った顔料の方がRUBLEVのラズライトよりも発色が良かったとの記事を書きましたが、単に粒子径が大きく、その分色が良かったというだけの事かも知れません。
画像の様に、細かくすり潰したものほどRUBLEVのラズライトに近い色になっています。
ある程度粒子は細かい方がマチエールも滑らかになるし扱いやすいんじゃないかと思います。
しかし一方細かくするほど、発色は悪くなる。
この粒子径の違いはウルトラマリン抽出後の色にも影響してくると思われます。
顔料をどの程度の大きさにするのか、見極めどころがむずかしいところですね。

天然ウルトラマリンの抽出 ~顔料第一号

洗い作業を終えて乾燥してとれた、天然ウルトラマリン顔料のお披露目。
こちらは最も色味の良かった3度目の抽出によるもの(同じパテからの抽出です)。RAWで撮影して色調整しましたので、今までのものよりも実物に近い発色になってるかと思います。あくまで私の環境での調整ですが…。
今回のパテ~抽出では不純物も多量に出してしまっていましたが、それでもかなりの純粋な青を取り出せています。
ではリンシードオイルを足して、抽出前のラピスラズリ顔料、合成ウルトラマリンとの比較をば。左が抽出前のラピスラズリ顔料、右が抽出後の天然ウルトラマリン、真ん中がマツダスーパーの合成ウルトラマリンになります。
ううむ…これは太陽光のもとで撮影しないとダメかな…
画像で見ると左と右、あんまり変わんないんじゃないかって感じ(むしろ左が一番いい感じ)ですが、明らかに透明度と彩度が違います。
抽出したウルトラマリンはかなり合成に近い色味が出ています。
カンペキな抽出ができればもっと良い色になるでしょう。

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