別冊 美術手帖 1983年 夏/油絵 材料と表現 材料+道具総カタログ

私がよく「本書を熟読すれば技法書は不要」と素人の方へオススメしている本です。
ラングレやデルナーが書いた技法書は膨大な文字で綴られた事典のような内容で、そこから素人が想像する何かしらの「技法」を読み取ることはなかなか難しいものですが、本書は遥かに読みやすく、かつ、かなり突っ込んだ内容をコンパクトにまとめられた良書です。

別冊美術手帖材料と表現油絵
  • 別冊 美術手帖 1983年 夏
    「油絵のマテリアル」
    材料+道具総カタログ
  • 油絵 材料と表現 材料+道具総カタログ

上記の様にタイトルの異なる同じ内容のものが二冊存在します。
若干古いので現在の事情とは多少異なる部分がありますが大筋で問題になる所はありません。

制作過程を順を追って説明してゆくような類のものでは無く、読んだだけで何らかの「技法」を習得できた気にさせる様な本ではありませんが、写真も多く、ページをめくっていて飽きない構成で材料についての基礎的な知識が得られる内容となっています。

「油絵とは」「絵具はなにからできているか」と始まり、成り立ちや素材・組成、製造工程など、かなり専門的な部分を押さえられている事には感心しました。反響が良かったためにすぐ単行本化されたのでしょうか?
記事の多くが歌田眞介・森田恒之氏によるものと言えば分かる人にはわかるでしょうけども、この両名の著書やホルベイン社の「絵具の科学」「絵画材料ハンドブック」などを既にお持ちであれば本書の内容は目新しくはありませんのでやはり「入門書」としてオススメするところです。
理屈っぽい文章が続くので「芸術は感性」と思い込んでる方には辛い本かも知れません。

 

油絵具の色見本には顔料、透明度、乾燥速度などのデータが記され、なんとなく眺めていればそのうち覚えますから購入する絵具の選択基準になるでしょう。

別冊美術手帖 色見本緑

 

乾性油の解説では脂肪酸組成や分子結合についても触れられています。
また写真入りでキャンバスの作り方も紹介されており、実践的な部分も“通して”読める本書のようなものは探してもなかなか見つけにくいと思われます。別冊美術手帖 キャンバス
実践という点ではさらに「[エッセイ] アトリエと道具」と題して22名の作家による道具や技法の紹介がなされています。
ここに青木敏郎氏が載っていた事が本書を手にした動機でしたが思わぬ良書でした。別冊美術手帖 エッセイ

巻末にはヴェラチューラ、エボウシュ、グラッシ、カマイユなど技法用語の簡易な事典も掲載。特異な用語もある程度分かっていると、絵描きとの会話が成り立ちます。

 

本書は「ヤフオク」「日本の古本屋」でたまにみかけますが1,000円以下で買えます。
amazonのマーケットプレイスには2018年2月現在、複数の出品がありますから入手性は良い方です。

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“別冊 美術手帖 1983年 夏/油絵 材料と表現 材料+道具総カタログ” への3件のフィードバック

  1. 1977〜1985年頃は美術出版社の技法書が、もっとも充実していた時代です。編集者も優れた人達が多く在籍していたようです。この時代の技法書を意識して199年代後半に、新画材大全などの技法書を発行しておりますが、予想する読者層をデザイン業界の人達に意識したため、専門性の低い書籍になってしまったようです。

    • コメントありがとうございます。
      時代的に技法を無視した抽象・モダン全盛からの反動みたいなものもあったんでしょうか。
      画材大全は持っていませんが、同様の事をどこかで聞いたので手にしてなかった気がします。

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