油絵具に含まれる乾性油は経年によって必ず黄色く変色します。
特に、乾性油の中でもっとも堅牢であるリンシードオイルは黄変の傾向か強く、この油が使われた作品などを光の全く当たらない場所に置いておくとものの1,2ヶ月でも目に見えて黄色くなります。
しかしこの黄変は太陽光に晒すことである程度回復する事が知られています。
今回は、全く光の当たらない場所に保管してすっかり黄変してしまったリンシード練り鉛白のサンプルを日光漂白してみます。
サンプルを塗ったキャンバス地にもリンシードが使われており、かなり黄変しています。
比較のため部分的に日が当たらない様にアルミホイルをかぶせ、窓ガラス越しの日差しに1時間半だけ晒した結果が以下。(クリックで拡大します)
さすがに凹凸の激しい部分の凹部に溜まった油の黄変は目視では変化ありませんが、全体的にみると、この時期の1.5時間の日差しでもかなり違いが出ました。
アルミホイルでおおった部分は以下画像の破線で囲った部分です。
この部分が黄色く残っているのがわかると思います。
この時期でも直射日光のあたる部分はかなり暖かくなります。
絵画作品を長時間直射日光に当てる事は、暖められた部分が膨張して亀裂などの原因になる事も考えられるのであまりおすすめは致しません。(描かれて何十年もたたないような新しい絵であれば、まだ絵具に柔軟性があるので神経質になる必要はないかと思われますが)
極端な黄変を防ぐのには北窓から入る明かり程度でも十分です。
また直射日光でなくとも、黄変した作品は明るい部屋に置いておけば黄色味を除去できるでしょう。
ところで、日光で黄変が除去される化学的メカニズムがどのようなものかは知りませんが、紫外線で除去できるものなら紫外線蛍光管で作品を暖めずに短時間で黄変を取り除く事が可能なのでしょうか。
どのみち紫外線は顔料の色味を奪ったりするのでこれを浴びせるのはいい事ではないでしょうけども。
続編はこちら
SECRET: 0
PASS:
あけおめことよろです?。
知ってはいても、実際どの程度なのかこんなにはっきりしたものを見るのは初めて
なので貴重ですねえ。
たった90分でこんなに変わるのは意外でした。
SECRET: 0
PASS:
>古吉さん
あめましておめでとうございます。まいど遅ればせながら…
完全暗所での純リンシード練りの黄変は強烈なものがありました。
今度はどこまで黄変が除去できるのか、長期間の日晒しを試してみます。
またこちらでご報告できると思いますのでご期待下さい。
SECRET: 0
PASS:
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。
日本リノキシンさんのサイトでは、アンバーニスの紫外線蛍光管による硬化について書かれていまして、すぐに形が変わってしまう花を描く際に採用しようかと思ったのですが、顔料への影響がわからないし、時間をかけて乾燥させた方が安全かと思いまして、採用しませんでした。
SECRET: 0
PASS:
>憂愁庵人さん
あけましておめでとうございます。
リンシードは紫外線で硬化する事が知られていて、ギターやヴァイオリン製作時にUV蛍光管を使用する例はしばしば見受けられます。
日本リノキシンにもたしかに紫外線の使用について書かれていますが、恐らく全てリンシードを含むワニスだろうと思います。(天然樹脂単体で紫外線硬化の性質を持つものもあるのでしょうか?)
私も製作時にUV蛍光管が利用できないか考えたことはありますが、他の影響の有無などについてあまりに知識がなさすぎる為実現はできていません。
製作中の作品は直接日に当てなくとも、日差しの入る明るい部屋に置けば乾きが早いかも知れませんね。