サンギーヌ

ついに実現したサンギーヌ&白チョークの両頭ホルダー。
日本には両頭ホルダーがありませんが、海外では割といろんな所で売ってます。安いし。
なぜ両頭なのか。
色の付いた紙などに陰影とハイライトを書き込むデッサンでは、この様に両頭になったものがあれば便利かとは思います。
海外ではそのようなデッサンがメジャーだという事でしょうか。

上記はカンバスの前で両頭ホルダー持ってますが、両者ともカンバスには白チョークで描いているように見えます。
果たして油彩の下書き時点でサンギーヌを使う事があったのか、単にデッサンの時に使うホルダーにチョークを挟んでるんで、それを下書きに使ってるという事なのか。
ときにチョークでの下書きですが、まあ乗りやすいというのもありますけど、木炭やらと違ってこれは油と混ざると透明になり(白チョークはつまり体質顔料)乗せた絵の具が濁らないという利点があります。
これは大きい。
ただし白いキャンバスに白チョークでは見えないので、有色下地にしておく必要がありますけども。
サンギーヌ(Sanguine)なんて聞き慣れないかと思われますが、かつてドローイングに使われた赤茶色のチョークであります。
ダビンチのデッサンで赤いのが残ってますが、画像等で見たことある方も多いと思われます。あれです。


先日紹介しました「よくわかる今の絵画材料」巻末にも数頁に渡ってズラズラ商品紹介されていたイタリアの画材店ZECCHIから購入。
100gで4.8EURと、比較的お安め。
赤土の固まったもんですね。
同じ商品ページにあった「Pietra Nera」は全くもって何なのか不明でしたがためしに購入。
価格はサンギーヌと同じ。黒っぽい粘土ですな。
かけらをホルダーにはさんでスケッチ帳に書いてみたけど、思ったほど色がつかない。薄い焦げ茶色です。
どこに使えばいいのやら…。
こちらはサンギーヌ。
絵描きなら軽くデッサンでも描いてみせろというつっこみはナシ。
ツルツルなフラットキャンバスには、Pietra Neraは全く乗らず。サンギーヌもいまいちで、白チョークが一番具合良いのでありました。

保存

保存

各社シルバーホワイト

各社鉛白

日本ではリンシード練りのシルバーホワイトといえば油一(ヴェルネも?)くらいしか見かけませんが、世界を見渡すとよりどりみどり…とまではいかないまでも、結構各社手に入ります。
今回はそれら含め、手持ちのシルバーホワイト群をご紹介。

そのまえに鉛白の呼び名についてのうんちくをば。

日本ではほぼ「シルバーホワイト」と固定で呼ばれますが、海外ではCremnitz White(クレムニッツホワイト)、Flake White(フレークホワイト)、Lead White(レドホワイト)などと呼ばれます。

Cremnitz Whiteは現チェコの工業都市クレムニッツから取った名ですが、実はそこでは鉛白は作られておらず、実際にはドナウ川沿岸のクレムスから供給されていたとの事。(デルナー本より)
本来「クレムニッツ法」と呼ばれる製造法によって作られた鉛白だった様ですが、1938年以降クレムス白は製造されていないそうで、現在は名前のみが残っている状態。

Flake Whiteは粒子が板状だった事からこの名が付いたそうですが、現在はそんな事どうでもよいらしく、鉛白と亜鉛華の混合絵具がこう呼ばれる場合がほとんど。(Williamsburgでは「Silver White」は鉛白+亜鉛華で、Flake Whiteは鉛白のみとなっている)

Lead Whiteは「鉛、白」で直感的に分かりやすいといえば分かり易いですな。仏語ベースの飯田達夫さんに「レドホワイト」は通じませんでしたが。

では以下各種鉛白の紹介とちょっとした所感。
感触や乾燥速度などはメディウム添加せずフナオカ中目キャンバスに塗った状態ついて述べています。

RUBREV (Natural Pigment社) Lead White 1
極限まで添加物を除いたとのうたい文句。シルバーホワイトについてはリンシード練りとウォルナット練りがある。手持ちのはリンシード練り。

チューブの最初は油が多く、黄色い油の膜が張る。使うにつれて油分が減り硬くなり、ツヤと黄変度も減る。
ねばりがあってキャンバスにしっかり食いつく感じ。
4月時点で翌日には指触乾燥。

春蔵絵具 シルバーホワイト
練りにこだわっているとの事らしく、柔らかく伸びが良い。反面、顔料径が一律に小さいのか、全般的に透明。
シルバーホワイトはポピー練り。
透明で柔らかすぎてパートつくりには向かず、グレーズかヴェラチューラみたく使うしかないといった感じ。
乾燥が異様に遅く、4月時点で厚い部分は指触乾燥に10日以上かかった。
黄変は少ない。

油一 (ホルベイン) レド・ホワイト
純粋なリンシード練りの様で糸を引く粘り気がある。
しかしこちらも練りのせいか、透明で薄く、パートとして弱い。
乾燥が異様に遅い。4月時点で指触乾燥に10日以上かかった。

BLOCKX シルバーホワイト
ベルギーのメーカー。やや柔らかい練りでシルバーホワイトにしてはさらりとした感じ。
ポピー練り。
4月時点で4日で指触乾燥。
黄変は少ない。

マツダスーパー (マツダ油絵具) シルバーホワイト
少し硬めの練り。ポピー練り。最も白い。
乾燥は早く、4月時点で翌日には指触乾燥。

ミノー (クサカベ) シルバーホワイト
一旦販売中止になって再販されたミノーのシルバーホワイト。
キャンバスへの食いつきもよく、粘りが強く厚いパートを置ける。感触は他と一線を画す「異様さ」で良好。
光沢も強く乾燥も早い。4月時点で翌日には指触乾燥。
乾燥後も若干弾力を感じる。
練りに加工油を使用しているとの話もあり、非常に興味深い製品のひとつ。

クサカベ ファンデーションホワイト
地塗り用の白だが比較の為に。
リンシード練り。チタンが入っている割にマツダスーパーより若干暖色寄り。
乾燥は早く、4月時点で翌日には指触乾燥。

OLD HOLLAND CREMSER WIT(CREMNITZ WHITE)
オランダ製。割と白く、練りはあっさり。淡泊な感じ。
5月時点で2日目に指触乾燥。
チューブが重く、純度は高いんじゃないかと思われます。
メーカーの解説によると全色 風車を使って抽出したリンシードオイルで練られている。

Williamsburg (GOLDEN社) Flake White
ニューヨークで自分と友人の為に絵具を作り出したのが駆けだしというメーカー。
リンシード練り。
チューブから出す時は硬く感じるが、ナイフで練るとねっとり感が出るが油一ほどではない。
暖かめの白。
5月時点で2日後には指触乾燥。

MICHAEL HARDING Cremnitz White 1
創業30年ほどのイギリスのメーカー。
リンシード練り。
油の量が多く最も軟練り。分離も黄変もひどい。
油のおかげでなめらか。
5月時点で2日後には指触乾燥。

黄変の度合いというか、黄味の具合をみてみます。
直射日光の入らない部屋(蛍光灯点灯)で、塗布後2~3ヶ月後の状態です。
黄味が強い順に
MICHAEL HARDING → RUBLEV → クサカベ → 油一 → Williamsburg = OLD HOLLAND → ミノー → BLOCKX → 春蔵 → マツダスーパー

光沢についてはミノーが異様にテカテカで、次いで油が多く黄変もひどいMICHAEL HARDING、続いてWilliams burg、OLD HOLLANDと、それ以降はどうも言い難く、最もツヤのないものは春蔵です。

なお、上記は当方の簡易的なテスト結果なので、下地や気温・湿度、風通しや日当たりなど様々な要因で結果が激変する可能性がある事を述べておきます。
また経験的にチューブの最初と最後ではかなり油の量など違ってきますので、特に黄変具合や乾燥速度が同じチューブでも変わる可能性は大です。

ちなみに鉛白の乾燥速度について、海外の掲示板への書き込みによると、
「古典的な手法による鉛白の抽出では酢酸鉛が入るので乾燥が早い。
近代的手法では比較的乾燥は遅い。」
との事。

今の鉛白はほとんど全て電気分解法とかいう手法による純粋な鉛白抽出法かと思われますが、油一と春蔵が突出して異様に乾燥遅いのは何なんでしょうかね。

[2011.10.24追記]
最近MICHAEL HARDINGの鉛白を中心に使ってますが(225mlチューブと量が多かった為)、案の定チューブから出す絵具が堅くなって来ました。
油の量が減ってるので、黄変もテスト時より少ないと思います。

よくわかる今の絵画材料


「美術の窓」誌に連載された青木芳昭さんの「実践!絵画素材の科学」が一冊の本にまとめられました。
4800円とお高めですが、フルカラーで図版が多く、パラパラめくって眺めるだけでも興味ある人ならある程度楽しめるでしょう。
一般向けの画材図鑑のようなものではなく、内容はかなり偏っていますのでご注意。
個人的にはシッカチーフについて書かれたところは勉強になりました。
ただし、各社シッカチーフの成分表をみるとルフラン製の「ハーレムシッカチーフ」ににコーパルが入ってる様になっていますが、現在はコーパルが合成樹脂に置き換えられているはずです。
参照されている資料が古く、他の製品についても現在とは異なる可能性がありますね。

あとはフナオカキャンバスの取材、絵具メーカーへの取材あたりが興味深かったです。
記事冒頭では「筆者の知る限り手塗り専門は世界でARTFIXのみ」と、最近話題の(?)ARTFIXについても言及されております。
ちなみに昨年あたりフナオカからカタログやサンプルを送ってもらった際には、本誌の取材記事が冊子化されて同封されておりました。
特に巻頭の方ではいろいろな溶液の作り方が載っていますが、それらをどこにどう使えばいいのかがよくわからず方手落ちな感が否めません。わかる人はわかるからいいのか…。
また様々な素材を紹介されてるのはいいけど、具体的にどこで入手すればいいのかのまでは、面倒みてくれていません。
巻末には海外メーカー・ショップの紹介が掲載されており、特にZECCHI(ゼッキ)の商品群はズラリと紹介されています。
掲載写真はゼッキのHPにあるものと同じなので、メーカーから資料を貰ってきたのでしょう。
http://www.zecchi.it/
カートシステムが無く、掲載商品の注文はメールでする事になりますが、つたない英語でも丁寧に対応してくれます。
海外製品ではOLD HOLLANDなどもちょっと載っていますが、こちらは他のメーカーと一緒に、また当方で紹介したいと思います。
著者の知識量はすごいと思うので、油彩に特化したこういう図版たくさんの分かり易い本を出してもらえればなぁなどと思います。
Amazonで購入可能です。

よくわかる今の絵画材料―絵画素材の科学
青木 芳昭
生活の友社
売り上げランキング: 261181

保存

具体的な穴あき修復

おっと、そんな具体的なところまで…
と思ったのがAtelier LA PORTEのブログ。
しばしば当ブログでも言及してきたアートマスターズスクールには、古吉さんや山本氏なども新講師陣として教鞭に立つ事になり何かと話題な今日この頃。
そのアートマスターズスクールに先だってまで勤めた阿佐美時代の私の先生陣が、ついに独立して新規開設した絵画教室が、アトリエ ラポルトであります。
場所は私も通った飯田達夫先生の油彩画技術修復研究所跡地。
ラポルトの藤木先生・佐藤先生は教育熱心、勉強家であり、デッサンとは何ぞやとか絵画の基本、歴史、素材、パース、コンポーション等々について、望めば延々と語ってくれるでしょう。
対してアートマスターズスクールは、阿佐美の卒業生・講師方と現役作家方のバリエーションに富んだ講師陣に総入れ替えとなり、内容も実技的に富んだものになる事でしょう。
ちなみに、私はあくまで部外者ですので。(他意なし)
さて今回ラポルトのブログ記事では、キャンバスに穴が空いた際の補修について書かれております。
蜜蝋とコテを使う手法(今は修復でもうやらないそうです)よりとっつきやすいですね。
補足情報としては、エレミ樹脂が聞き慣れない方もあるかと思いますが、これはPAReTなどで手に入ります。
ちょっとお高め。
まためのう棒はこれも日本で買うとバカ高いのですが、ゼッキから買うとものすごく安い。
飯田さんによると「犬の歯でもいい」らしい。
犬を飼ってる方はそちらで…
エレミ樹脂もゼッキから格安で購入可能です。

ARTFIX

アメリカのSAVOIR FAIREという会社の取り扱いブランドの一つに、キャンバスで有名な(?)「ARTFIX」があります。
セヌリエの輸入販売からスタートした会社らしいですが、セヌリエ、ラフェエル、イザベイなど取り扱ってる様です。
今回はキャンバスのサンプル集を購入しました。
ラインナップには4層塗りのフラットキャンバスがあるという事で興味津々ではあったのですが、メーカーにサンプル譲ってくれと頼むも「我々は日本に直接販売はしていない」つって断られる始末。
結局はDickBlickでサンプル集を販売していたので、そちらから入手。
あのBERGEに限りなく近い…!
そういえばBERGEって一時期セヌリエ傘下(?)だった様な。
セヌリエ製品を扱う代理店(だか何だか知らんけど)のブランド。
肌触りといい、何と言ってもあの独特の臭いが全く同じ。
サンプル集にはMade in Franceとの表記。(販売店の説明には「ベルギー産の亜麻使用」とある)
これはもしかしてBERGEと同じ工場か、同じレシピで製造されている可能性もあるんじゃなかろうか。
フラットなL64C、L84Cの地塗りは、油性であってもフナオカのF No.2フラットみたくツルツルではなく、絵具はくっつき易いんじゃないかなという感じがします。
フナオカF No.1フラットの表面は割とザラついてますが、そちらよりはきめ細かいかな。(布目ではなく地塗りが)
BERGE手に入らなくなって困ってる方には朗報かも知れませんよ。
G1やB1程度の品は無く、よりフラットで高価なラインナップしかありませんが。
まあそのうち試してみたいと思います。

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